ここは朔が支配人を務める劇場《閑古鳥の啼く朝に》のサロンです。上映案内から、日々のつれづれ事まで。 のんびりまったり更新中。renewal:07/05/02
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まさか死産。
その考えが頭をよぎり、居並ぶ使用人たちをかき分けるようにして寝台に近付く。
寝台横には、ひざまずくようにして控えている産婆の姿があった。
腕の中に何かを抱え込んだ格好で、寝台にうつ伏せで横たわったまま枕に顔を伏せて泣いている妻を慰めているようだ。
「赤子はどうしたのだ」
状況把握のためについ詰問口調になる。
産婆は弾かれたように体を起こすと、おずおずと腕の中のものをソリュートへ差し出した。
「男児でございます…」
その言葉とともに、産婆の腕に抱かれていたものの覆いが取り払われる。
「これは…」
普段は不機嫌以外の表情を出さないソリュートでさえ、それを一目見て絶句した。
未熟児らしく形は小さいが、赤子は確かにヒトの姿形をしていた。
妻に似たのか、生まれたばかりだというのに雪で洗ったような白い肌には汚れ1つない。
小さな手足をしきりに動かしながら、宙に向かって何かを求めるようにむずがっている。
そう、何かを求めるように。
赤子は未だ見えないはずの目を、黒曜石をはめ込んだような両眼を見開き、泣くこともせずにじっと宙の一点を見据えていた。
その様は異様としか言いようがなかった。
まるで千の齢を重ねた賢者のごとく落ち着きはらった眼差し。
そして何より異様だったのは、その瞳の色、さらに髪の色だった。
黒。
フィンデル・ファロスにすまう人間には決して表れない色。
黒は今は封印された異界に棲む魔族の色。
しかも魔族の中でも高位の者にしか表れない色だった。
その考えが頭をよぎり、居並ぶ使用人たちをかき分けるようにして寝台に近付く。
寝台横には、ひざまずくようにして控えている産婆の姿があった。
腕の中に何かを抱え込んだ格好で、寝台にうつ伏せで横たわったまま枕に顔を伏せて泣いている妻を慰めているようだ。
「赤子はどうしたのだ」
状況把握のためについ詰問口調になる。
産婆は弾かれたように体を起こすと、おずおずと腕の中のものをソリュートへ差し出した。
「男児でございます…」
その言葉とともに、産婆の腕に抱かれていたものの覆いが取り払われる。
「これは…」
普段は不機嫌以外の表情を出さないソリュートでさえ、それを一目見て絶句した。
未熟児らしく形は小さいが、赤子は確かにヒトの姿形をしていた。
妻に似たのか、生まれたばかりだというのに雪で洗ったような白い肌には汚れ1つない。
小さな手足をしきりに動かしながら、宙に向かって何かを求めるようにむずがっている。
そう、何かを求めるように。
赤子は未だ見えないはずの目を、黒曜石をはめ込んだような両眼を見開き、泣くこともせずにじっと宙の一点を見据えていた。
その様は異様としか言いようがなかった。
まるで千の齢を重ねた賢者のごとく落ち着きはらった眼差し。
そして何より異様だったのは、その瞳の色、さらに髪の色だった。
黒。
フィンデル・ファロスにすまう人間には決して表れない色。
黒は今は封印された異界に棲む魔族の色。
しかも魔族の中でも高位の者にしか表れない色だった。
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